こんにちは
ホルン吹きです
たまにホルンの中古情報とか新作情報とか見ている時に
よく検索で「なぜ木管五重奏にホルンが入っているのか」という
解説を目にします
だいたいどの解説も
1.木管楽器との相性が良い
2.ホルン以外の金管楽器(トランペットとトロンボーン)は教会で使用されいたため敷居が高い=ホルンが庶民的な楽器
という内容がほぼほぼです
うーん
ごもっともと言えばごもっともなのですが
どうも自分としては納得できません
根拠が薄いような気がしてしまいます
何かもっと別の理由があるような、、、
ここで
なぜ「木管」五重奏に金管楽器のホルンが入っているのか
を自分で考えてみました
※ここからは自分の独断と偏見を含む内容です
まず、木管五重奏をいろんな言語で調べて見ました
木管五重奏は英語でwind quintet
吹奏楽は英語でwind orchestra
ここで思うのがwindはただの管楽器の意味なんじゃないかと
そいでドイツ語で木管五重奏を調べてみると
Blaserquintett
直訳すると管楽五重奏で特別木管を指す言葉ではないようです
wind instrumentを調べてみると
http://ejje.weblio.jp/content/wind+instrument
こちらも管楽器のことを指しており
木管楽器のみを指すものではないようです
とすると、日本語の木管五重奏がおかしいような気がしてきます
もしかしたらbrass quintetに対する言葉なのかもという気がしてきます
ただただ Fl. Ob. Cl. Fg. Hr.の編成の室内楽曲を木管五重奏曲と
日本語ではそう呼んでいるだけな気がしてきました
外国語では木管五重奏ではなくただの管楽五重奏の意味だということがわかりましたし
となるとやはり上記の1.2.のよくネットで見る理由はますます納得がいきません
1.木管楽器との相性が良い
2.ホルン以外の金管楽器(トランペットとトロンボーン)は教会で使用されいたため敷居が高い=ホルンが庶民的な楽器
これについてもう少し考えて見ます
(この記事の)これ以降は「木管五重奏」を「管楽五重奏」と呼ぶことにします
オーケストラ(管弦楽)の編成は基本的に弦5部+管楽器+打楽器です
モーツァルト、ベートーベンあたりの時代で主流となっていた管楽器の編成は
フルート、クラリネット、オーボエ、ファゴット、ホルン、トランペット(+トロンボーン)という感じです
管楽器のアンサンブルはこの6ないし7つのパートで行います
各パートの本数は基本的には2本ずつです
アンサンブルでもっとも親和性が高いのは当然各パートのパートナーです
例えばフルートで言えばアンサンブルはフルート1stとフルート2ndのアンサンブルが
一番親和性が高く合わせやすいはずです(特別な場合を除いては)
それは物理的に発音機構、座る位置が近いためです
その次に大きなグループでの親和性を考えると
なるほど上記の1.2.の理由を考えると
フルート、クラリネット、オーボエ、ファゴット、ホルン
のグループが良いかもしれません
古典派の巨匠たちが活躍した時代ホルンやトランペットは今のような
ロータリーやピストンの機構を持たず自然倍音列を基本とした音のみで
演奏していました(ナチュラルホルン、ナチュラルトランペットと呼ばれています)
http://seiko-phil.org/2012/12/25/223441/
ナチュラルホルンでは基本的に上記の楽譜の音しか出ませんが
ホルンはベルが後ろを向いており、少し前の時代に手でベルの隙間の大きさを
調整し自然倍音列以外の音を出す技法が考案されていました
そのため当時はホルンがトランペットに比べて旋律を演奏することにおいては向いていました
トロンボーンは戦場や教会の楽器であり、当時は特別な部分で使うことが多い楽器です
モーツァルトのレクイエムのトロンボーンの出番は最後の審判を告げる特別なソロということは有名です
また、やはり直管の金管楽器(トランペットやトロンボーン)と木管楽器は音色が溶け合いにくいということは事実であると思います
上記の1.2.を鑑みると当時のオーケストラの管楽器でアンサンブル可能なグループがフルート、クラリネット、オーボエ、ファゴット、ホルンだったのではないでしょうか
そしてこの5つの楽器の編成においてライヒャという人物が24曲もの曲を書いています
その後の時代でも多くの作曲家がフルート、クラリネット、オーボエ、ファゴット、ホルンの編成の5本の管楽器のための室内楽を書いており
これが伝統的な編成の1つとなっていったのではないでしょうか
この古典派の時代にはホルンで多くの試みがなされており
ベルを塞ぐ技法でホルンは当時のトランペット的な性格から
旋律を吹く楽器へと性格を変えていきました
このころのホルンの旋律といえばモーツァルトのホルン協奏曲が
特に有名ですが上記に出てきたライヒャの管楽五重奏曲ではとんでもない
旋律がたくさん出てきます
下の楽譜はライヒャの管楽五重奏Op.91第2番の4楽章のホルンソロです
ナチュラルホルンで演奏は可能ですが、非常に難易度が高く、もはや超絶技巧でしょう
私はロータリーを使わずに吹くことはできません
旋律中の半音階が目を見張ります
http://javanese.imslp.info/files/imglnks/usimg/1/1b/IMSLP16719-Reicha_Quintet_Op91No2_horn.pdf
このことからも盛んに研究、実験がなされていたことがわかります
まずベートーベンでこのような旋律は出てきません
当時管弦楽曲で使うホルンの自然倍音列以外の音は
記譜のC♯、E♭、F、(A、)Hくらいで
それ以外の音を目にすることは結構珍しいです
下の画像はベートーベンの5番です
http://ks.imslp.net/files/imglnks/usimg/9/90/IMSLP440399-PMLP01586-Horns.pdf
これ以外の音は開口端補正の都合で音程を定めることが難しいためではないかと思います
旋律ができるといっても基本的にはトランペットと同様自然倍音列です
ライヒャは
フルート、クラリネット、オーボエ、ファゴット、ホルン
という編成でホルンに他の管楽器と同様の立場を求め
ホルンにも難しい旋律をたくさん書いています
これは後の作曲家達にかなり影響を与えていたのではないでしょうか
ホルンを自然倍音列の楽器から旋律の楽器へと認知するきっかけにならなかったのかなあ
またこういったことを沢山試みてきたために
フランスでのナチュラルホルンの根強いこだわりが生まれたのではと想像しています
※ライヒャはフランスでの活動を長く行なっていたらしいです(Wikipediaより)
話が逸れてしまいましたが自分の推測をまとめると
伝統的な管楽五重奏(Fl,Ob,Cl,Fg,Hrのアンサンブル曲)が日本に入ってきたときにそれを木管五重奏と命名してしまっただけなのではないかと思う
その理由については木管楽器が多数を占めるとか
金管五重奏(brass quintet)に対する言葉としての定義とか
わからないけどそんなところかな
だからどうして「木管五重奏」にホルンが入っているのかという質問自体おかしいのかもしれない
管楽五重奏の伝統的な編成の1つにFl,Ob,Cl,Fg,Hrのものがあり、それを日本では木管五重奏と呼んでいるということではないだろうか
断定するにはそれが正しいか調査する必要があるもののこの説明の方がしっくりこないかなあ
自分の勝手なイメージが多分に入っているのでなんともですが
皆さんはどのようにお考えでしょうか
聞かせていただけると勉強になります
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